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チップレット技術とは? 次世代CPU・GPUの性能向上を支える革新的アーキテクチャ
近年、CPUやGPUの性能向上は、従来のシリコンプロセスの微細化だけでは限界が見えつつあります。
そんな中、新たなアプローチとして注目されているのが「チップレット技術」です。
AMDのRyzenプロセッサや、Intelの次世代CPU「Meteor Lake」、さらにはNVIDIAの今後のGPUにも採用が進められており、今後の半導体業界に大きな変革をもたらす技術として期待されています。
チップレット技術とは?
チップレット(Chiplet)技術とは、複数の小型チップを組み合わせて一つのプロセッサを構成する技術のことです。
これまでのCPUやGPUは、1つの巨大なシリコンダイの上にすべての機能を統合していました(これを「モノリシック設計」と呼びます)。
しかし、プロセスの微細化が限界に近づくにつれ、大規模なシリコンダイを製造するコストや歩留まり(不良品の割合)が問題になってきました。
そこで考えられたのが「小さなチップ(チップレット)を組み合わせて一つのプロセッサを作る」というアプローチです。
チップレット設計と従来のモノリシック設計の違い
従来のモノリシック設計では、すべての機能(CPUコア、キャッシュ、I/O、メモリコントローラーなど)を1つのダイにまとめる方式でした。しかし、この方法ではダイが大きくなればなるほど、製造コストが高騰し、欠陥率も上昇します。
一方、チップレット設計では、異なる機能を持つチップを分割して製造し、それらを相互接続することで一つのプロセッサを構築します。
例えば、CPUコア部分は最新の微細プロセス(3nmや5nm)、I/Oコントローラーは成熟したプロセス(7nmや12nm)で製造するといった「使い分け」が可能です。
チップレット技術のメリット
チップレット技術には、非常に多くのメリットがあります。
製造コストの削減
チップレット技術では、小さなチップ(ダイ)を個別に製造し、それらを統合するため、単一の大きなダイを作るよりもコストを抑えることができます。
特に、先端プロセス(5nm以下)を使用する部分を最小限に抑え、他の部分を成熟したプロセス(7nmや12nm)で製造できるのが大きな利点です。
歩留まりの向上
大きなシリコンダイでは、1つの欠陥が製品全体をダメにしてしまうリスクが高まります。
しかしチップレット設計では、欠陥のあるチップレットだけを排除し、残りのチップを有効活用できるため全体の歩留まりが向上します。
柔軟なカスタマイズが可能
チップレット技術を活用することで、特定の用途に合わせたプロセッサを柔軟に構成できます。
例えば、ハイエンド向けには高性能なチップレットを複数組み合わせ、エントリー向けにはコア数を減らすといった調整が容易になります。
マルチダイ構成によるスケーラビリティ
チップレットを増やすことで、高性能なマルチコアCPUやGPUの設計がしやすくなります。
AMDの「Ryzen Threadripper」や「EPYC」では、複数のチップレットを並列接続し最大96コアを実現するなど、スケーラビリティの高さが魅力です。
チップレット技術のデメリットと課題
もちろん、チップレット技術にもいくつかの課題があります。
チップ間の通信遅延
モノリシック設計ではすべてのコンポーネントが1つのダイ上にあるため、データのやり取りが高速です。
しかし、チップレット設計では、チップ間のデータ転送が発生し、通信レイテンシ(遅延)が増加する可能性があります。
この問題を解決するために、AMDは「Infinity Fabric」、Intelは「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」といった技術を導入し、高速なデータ転送を実現しています。
設計の複雑化
チップレットを相互接続するためには、高度なパッケージング技術が必要です。従来のモノリシック設計に比べて設計や開発コストが増加するという課題があります。
ソフトウェア最適化の必要性
チップレットアーキテクチャを最大限に活かすためには、OSやソフトウェア側の最適化も必要です。特に、マルチスレッド処理を最適化するためのスケジューリング技術が求められます。
チップレット技術はどこまで進化するのか?
現在、AMDのRyzenシリーズやIntelの次世代CPU「Meteor Lake」、AppleのMシリーズにもチップレット技術が採用されつつあります。
今後は、GPUやAIプロセッサ、さらにはサーバー向けの高性能チップでもチップレット技術が主流になっていくでしょう。
また、チップレット同士を光インターコネクトで接続する「フォトニック・チップレット」や、3D積層による「3Dチップレット」など、さらなる進化も期待されています。
いよいよPCの核ともいえるCPUやGPUの製造プロセスに革新が起こりそうです。非常に楽しみですね。